2017.11.22
先日(2017/11/7)、『ユニクロ、世界でICタグ』という見出しの記事が日本経済新聞の1面に掲載されました。
ユニクロの記事に限らず、ここ最近、ICタグに関する話題が各種メディアで取り上げられる機会が増えてきており、改めて注目が集まってきているように感じます。
今回は、いま改めて注目が集まるICタグの最新動向、今後の展望やサプライチェーンにもたらす影響などについて、まとめました。
まずはじめに、ICタグとは一体どのようなものなのか、簡単に整理しておきたいと思います。
ICタグとは、ICチップと小型のアンテナで構成されたもので、ICチップに記憶された情報を無線(RF:Radio Frequency)によって直接触れずに読み取る技術のことをいいます。
情報の読み書きには無線(RF)を使った専用のリーダーとライターを使い、記憶されているID番号(個体を表す情報)を読み取るので、RFIDとも呼ばれます。
ICタグ自体の厚さは1mm以下で、商品の包装に貼付されたり、値札タグに組み込んで使用されています。
ICタグは、バーコードに対してはるかに多い情報量を記憶できる、内容を瞬時に一括で直接触れることなく読み取ることができるなど、技術的に優れた点が多いことから、流通のさまざまな場面で効率化が期待されている技術です。
バーコードとの技術的な比較は、下表のとおりとなります。
小売業を中心に、ICタグを導入する狙いはどこにあるのでしょうか。
主な導入目的として次の3点が挙げられます。
① セルフレジ化によるレジ要員の削減
ICタグを活用し、顧客自らが精算するセルフレジを導入すれば、顧客の混雑時のレジでの待ち時間が短縮され、店側のレジ要員も削減できます。
② 店舗業務の生産性向上
小売店舗では、商品の入荷時に商品の検品作業(発注数と納品数が合っているかの確認)を行っていますが、ICタグがあれば一括して瞬時に検品ができるので、作業時間を大幅に削減できます。また、在庫管理についても、商品棚やバックヤードの在庫をすべて瞬時に棚卸しできます。
③ SCMの効率化
ICタグを全商品に貼り付けて個品管理し、情報をサプライチェーンで共有・活用することで、川上側からの流通過程の追跡、小売側からの商品履歴の参照などのトレーサビリティが向上します。情報管理の高度化によって、SCMにおける需給調整等の業務効率化にも期待できます。
また、商品の生産から消費までの流通プロセスでは、商流・物流が進む度に、検品作業が何度も行われており、各プロセスにおける在庫管理も必要です。ICタグが、サプライチェーンの上流工程で取り付けられ、それを活用すれば、全体の検品作業・在庫管理が効率化でき、商品の流通コストの削減にも期待できます。
2017年4月に、経済産業省が「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」をコンビニ大手5社(セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズ)と共同で発表しました。
共同宣言の内容は、一定の留保条件を示したうえで、ICタグの活用に向けた活動を進めるというものです。
取り扱う商材の単価が高くないコンビニで、全商品へのICタグ導入の動きが進めば、他の業界やサプライチェーンの各プレイヤーへの波及に弾みがつきそうです。
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが、ICタグの本格導入に向けて仕組みを構築しており、国内外の全3,000店でICタグを利用する方針。初期投資額は数百億円の見込みとのことです。
傘下の「GU」では、国内店舗の約半数に当たる176店で既にICタグを利用しており、セルフレジを導入しています。
ユニクロの製品についても、既に一部の商品にはICタグが実装されているようですが、ICタグを活用する仕組みの運用はまだこれからのようです。
ユニクロ製品の一部にもICタグの表記がある(H29.11現在)
アパレル業界は、コンビニやスーパーなどと比べて商材の単価が高い為、比較的導入が先行している状態です。
前述のとおり、ICタグの普及は、今後もじわじわと普及する傾向が続くと思われますが、その普及を阻害する脅威として考えられるのが、「Amazon GO」の存在です。
「Amazon GO」についてはご存知の方も多いと思いますが、アメリカのアマゾン・ドット・コムが新しく展開する無人コンビニ店です。
「Amazon GO」では、画像センサー、重量センサー、AIを駆使して、決済を自動化する仕組みが構築されています。
決済が自動化されるだけでなく、ユーザーIDに紐づけて来店者の購買前データ(誰がどの商品を手に取ったか、棚に戻したかなどの情報)や購買データ(誰がどの商品をいつ購入したのか)を取得できる仕組みであり、マーケティング的に非常に優れた仕組みであると言われています。
検品や棚卸し作業を効率化する技術は含まれておりませんが、アマゾンが「Amazon GO」の仕組みを流通小売業者に提供し、その仕組みに世界の流通小売業界が乗ることとなれば、ICタグの普及の流れにブレーキをかける可能性があると考えられます。
最近になって、ICタグが改めて注目されはじめた背景には、少子高齢化の進行による労働人口の減少、人手不足による労務コストの上昇などの課題があります。
この傾向は着実に進んでおり、流通の効率化は待ったなしの状態となっています。
今回ご紹介した、アパレルやコンビニにおけるICタグ活用に向けた需要サイドの活発な動きと、ICタグメーカーによるコストダウンに向けた動きの両輪によって、ICタグは普及に向けてジワジワと進んでいくことになると思います。
ICタグの価値を最大限活かし、サプライチェーンの効率化につなげていくためには、物流会社を始めとしたサプライチェーンに参加する各事業者がICタグに対応していくことが必要です。
物流センターにおいても、ICタグへの対応があたりまえのように求められる時代がすぐそこまで来ています。